フリマアプリは、誰でもスマホだけで出品でき、個人同士で取引が完結するため、敷居が低く、多くの人が利用するプラットフォームです。
この「手軽さ」が、正しく使えば生活の助けになる一方で、倫理観が希薄な人にとっては、短期間で簡単に稼げる場所に見えてしまいます。
特に若年層は、SNS文化の影響で他者の成功や豪華な生活に過剰に刺激されやすく、自分の現状とのギャップを埋めるために瞬発的な利益を求めがちです。
本来、収入は労働やスキル提供によって生まれるものなのに、キラキラした世界観や過度に盛られた日常投稿を見続けることで「努力しなくても稼げる」という錯覚を抱きます。
この認知の歪みが悪質な選択を引き起こします。
ブランド品の写真をネットから転用し、正規品のふりをして出品する。
購入者の質問には「限定品で入手困難」や「プレゼントで貰ったため正規店レシートはない」と言って逃げ切ろうとする。
最初の数件で高評価がつけば、売り手は自信を持ち、倫理感より利益を優先する思考に変わっていきます。
加えて「自宅保管」「素人検品」という曖昧な言葉が逃げ道として機能するため、自分は悪人ではなくちょっとした誤差だと正当化します。
この自己正当化の積み重ねが詐欺行為への階段を滑りやすくするのです。
偽物販売が拡大するメカニズムと事例
フリマ詐欺が本格化するのは「売れてしまった成功体験」からです。
偽物を安く仕入れ、包装や撮影で雰囲気を整え、最初は低価格で販売し高評価を獲得する。
レビュー欄で「丁寧」「対応が早い」「写真通りです」と書かれれば、その評価が次の被害者を呼び込みます。
信用は本来積み重ねるものなのに、悪質な手口では信用が“餌”に変わるのです。
販売者は「もっと稼げる」と考え、次の段階に進みます。
高額ブランドバッグやアクセサリー、限定品スニーカーなど、コピー品でも人気がある商品を狙って販売価格を跳ね上げる。
包装を豪華にし、開封写真を載せ、あたかも正規ルートで入手したかのように装います。
この時期の詐欺師は、クレーム対応に慣れ始めています。
届いた商品が違うと訴えられたら「配送トラブル」「すり替え」と言い逃れし、証拠提出を迫られればブロックして逃亡。
匿名性の高さとアプリの弱点を理解し、被害者を個別に切り捨てる戦略に移行します。
この段階で販売者は自分の立場を完全に見誤ります。
購入者は個人でも、集団になった瞬間“証拠の塊”になる。
複数人の被害報告がSNSで共有され、スクリーンショットが時系列で拡散されれば、プラットフォーム側も警告措置を行い、凍結や強制退会で追い込むケースも珍しくありません。
売る本人は「可愛い女の子」「若い」「私生活が華やか」などの属性が免罪符になると思い込みがちですが、購入者にとって重要なのは商品が本物かどうか、信頼できるかどうかです。
外見や性格は、結局売り手の自己演出にすぎず、判断材料になりません。
発覚後に起きる現実の社会的制裁
詐欺はネット上の炎上だけでは終わりません。被害者が複数いる場合、刑法上の詐欺罪が成立し、警察が動きます。
フリマアプリの取引履歴はサーバーに保管され、発送伝票の番号、金融口座の入金履歴、メッセージログの全てが客観的証拠になります。
本人が「逃げ切った」と思っている期間は、単に捜査の準備期間です。
複数の被害報告が集まり、警察が情報開示を求めればアプリ運営は提出します。
スマホの内部データ、発送履歴、銀行口座、SNSアカウントの紐付け、全てが本人の名前と繋がるため匿名とは言えません。
検挙後は社会生活が崩れます。
アカウント凍結、大学や職場の信用損失、周囲の友人の離反、家族からの失望。
詐欺逮捕は報道されなくても生活圏では噂として残り続けるため、再就職や進学で大きな障壁となります。
罰金や執行猶予で済んでも、「詐欺で捕まった人間」という事実は一生消えないのです。
短期的な利益を求めた代償は計り知れません。
失うのは商品や売上ではなく、信用・人間関係・将来そのすべてです。
健全な稼ぎ方・信頼を積み上げる方法
フリマアプリで稼ぎたいなら、販売者は商品管理と透明性を最優先にすべきです。
中古品であれば状態を丁寧に記述し、傷や汚れを隠さず、写真を複数角度から掲載。
ブランド品なら領収書・保証書・正規購入証明などの裏付けを用意し、購入者が安心できる状態に整えます。
特に学生や若者は、目先の利益ではなく継続的な信用形成を意識した方がいいです。
丁寧な対応と誠実な記載は、直接の利益にはならなくても次の取引を生む資産になります。
レビューは財産であり、売上履歴は信用残高です。
SNSでの人気や見栄のために稼ぐ発想は危険です。
SNSは虚構を映しやすく、良い生活をしているように見える人ほど背後に借金や闇バイトがあるケースも珍しくありません。
焦燥感に負けて安易な手段へ走るのではなく、自分が提供できる価値を時間をかけて育てる方が、最終的には安定します。
誠実さは目に見えない資産です。
失えば戻らず、守れば育ちます。
フリマは単なる取引の場ではなく、人間同士の信頼が繋がる社会です。
そのつながりを害すれば、必ず自分自身に跳ね返ってきます。
